「旅館業で民泊を始めたいけれど、用途地域や建物の用途ってどう確認すればいいの?」と悩んでいませんか?
旅館業による民泊は、年間を通じた営業が可能な一方で、用途地域や構造基準などクリアすべき法的要件が多数存在します。
条件を満たさなければ、どれだけ準備しても営業許可は取得できません。
- これから民泊始めようと考えている初心者の方
- 用途地域や建物用途などの許可要件を正しく理解したい方
- 旅館業法に基づく民泊運営を検討している方
旅館業民泊とは?基礎知識と注目される理由

1.民泊の営業形態は2種類
民泊を運営するには、大きく分けて以下の2つの選択肢があります。
①住宅宿泊事業(いわゆる民泊新法)
②旅館業法に基づく営業許可(旅館業民泊)
「住宅宿泊事業」は年間180日までという営業日数制限があるのに対し、「旅館業法に基づく民泊」は営業日数に制限がないため、より安定した収益を見込めます。
2.なぜ旅館業民泊が注目されているのか
コロナ禍後のインバウンド回復により、旅館業民泊は高い集客力を持ち、年間を通じて運営が可能なビジネスモデルとして注目されています。特に法人経営や複数施設の運営を目指す方には、有力な選択肢となっています。
旅館業許可を取るために押さえるべき3つの要件

1.用途地域とは?まずは土地の制限を確認
民泊を始める前に確認すべき最初のポイントは「その土地で民泊ができるかどうか」です。これは都市計画法に基づく用途地域によって決まります。
用途地域により、ホテル・旅館の建築や営業が認められているかどうかが異なります。旅館業法に基づく民泊は、建築基準法上「ホテル・旅館」として分類されるため、以下の地域でのみ営業が可能です。
用途地域名 | 許可の可否 | 説明 |
第1種住居地域 | △ | 3000㎡以下のホテル・旅館であれば可能(条件付き) |
第2種住居地域 | ○ | 一般的なホテル・旅館の建築・営業が可能 |
準住居地域 | ○ | 幹線道路沿いなど、商業施設と共存できる住宅地域 |
近隣商業地域 | ○ | 住宅・商店・小規模工場が混在する地域で、宿泊施設も設置可能 |
商業地域 | ○ | ホテルやデパートなどの商業施設が多く集まる地域 |
準工業地域 | ○ | サービス業や軽工業中心の地域で、宿泊施設の営業も可能 |
2.建物の用途制限について〜ホテル用途でなければ許可は出ない〜
次に確認すべきは「建物の用途」です。旅館業の許可を取得するには、建築基準法上の用途が「ホテル・旅館」とされていることが必要です。
ただし、使用面積が200㎡以下の小規模施設であれば、用途変更の確認申請が不要な場合もあります。建物の一部を民泊に使う場合は合計面積が200㎡を超えると申請が必要なります。また、申請不要でも、構造・設備は「ホテル・旅館」の基準を満たす必要があります。
なお、住宅宿泊事業(民泊新法)であれば、「住宅」「共同住宅」「寄宿舎」などでも運営が可能です。
3.構造設備の基準とは?簡易宿所営業での要件
旅館業民泊の多くは、「簡易宿所営業」という形態を選択します。
これは、ドミトリーや一棟貸しなどに適した営業形態です。
旅館業法施行令に基づく主な基準は以下のとおりです。
- 客室の延床面積は33㎡以上→宿泊者が10人未満の場合は「3.3㎡ × 宿泊人数」で代替可能
- 2段ベッドを使用する場合は上下の間隔が1m以上
- 換気・採光・照明・排水設備などが適切であること
- 入浴設備が必要(公衆浴場が近ければ免除される場合あり)
- 洗面・トイレの設置が必要
- 自治体による追加基準への対応が必要
なお、「ホテル営業」「旅館営業」と異なり、フロント設置の義務はありませんが、自治体によっては条例で義務付けている場合もあります。
民泊営業を成功させるために必要な準備

1.事前調査と計画性の重要性
旅館業民泊は、営業日数に制限がないという魅力がある一方で、法的要件が多く、準備不足による失敗も少なくありません。
成功のためには、以下の3点を確実にチェックしましょう
- 土地が適切な用途地域かどうか
- 建物用途や設備が基準を満たしているか
- 保健所・消防・建築士などとの連携体制
2.専門家との連携が成功の鍵
旅館業民泊では、多くの法令と自治体条例が関わってくるため、行政書士や建築士、消防設備士などの専門家と連携することで、スムーズに許可取得が進められます。
まずは、地域の保健所や自治体ホームページから情報収集を始めることが推奨されます。
専門家の力を借りながら、いち早く許可取得し、運営開始させましょう!!
許可が下りない主なケース(具体例を交えて)

1.用途地域や建物の用途に関する問題
旅館業法に基づく営業許可が下りない主な理由の一つは、用途地域が不適合であることです。民泊として営業を行うためには、地域が定められた用途に適合している必要があります。
住宅専用地域や工業地域などでは民泊としての営業が認められません。用途地域に関する制限をクリアしないと、どれだけ設備を整えても営業許可は得られないため、土地の用途確認は必須です。
次に、建物の用途が不適切である場合も許可が下りません。
旅館業の営業を行うためには、建物が「ホテル・旅館」として使用されることが前提となります。もし建物がその用途に該当していない場合や、用途変更の申請が未実施の場合も許可が下りません。したがって、建物の用途を変更する必要があるかどうか、事前に確認しておくことが重要です。
2.構造や法令違反による拒否
さらに、許可が下りない理由として、構造設備が旅館業法施行令の基準を満たしていないことが挙げられます。
民泊施設の設備には、換気や採光、照明、防湿、排水設備など、基本的な基準が定められています。これらを満たしていない場合、許可を受けることができません。
また、消防法や建築基準法などの他法令に違反している場合も許可が下りない理由となります。施設の安全性を確保するために、これらの法令を遵守することが求められます。
民泊運営後のポイントと注意点

1.法令遵守と設備の維持
民泊の運営を開始した後にも、法令遵守は非常に重要です。
営業を続ける限り、常に施設が法令基準を満たしていることを確認する必要があります。
特に、設備面では換気設備や照明、トイレなど、法的に求められる基準を満たしているかを定期的に点検することが求められます。これにより、営業を続けるための条件を維持することができます。
新たに施行される法令や規制に対応することも必要です。
民泊に関する規制は変更されることがあり、それに適応しないと営業停止を命じられることもあります。したがって、常に最新の規制を把握し、必要に応じて施設の改善や対策を行うことが大切です。
2.顧客対応と地域との調和
民泊の運営では、顧客対応の重要性が非常に大きいです。
ゲストとの接触が密接なため、クレームやトラブルへの対応がそのまま施設の評判に繋がります。
特に、宿泊者からのフィードバックには迅速に対応し、問題が発生した場合には冷静に解決することが求められます。良い口コミを得るためには、真摯な対応が欠かせません。
3.地域住民との協和
また、地域との調和も成功するための重要な要素です。
民泊施設が地域社会に与える影響を避けるため、騒音問題や近隣住民への配慮を忘れてはいけません。
地域住民との良好な関係を築くために、地域のルールやニーズに応じた運営を心掛け、地域との協力を深めていくことが大切です。
まとめ:用途地域の確認から一歩を踏み出そう

旅館業法に基づく民泊は、年間営業日数の制限がなく、安定収益が見込める魅力的な事業です。
しかし、その一方で「土地」「建物」「設備」のすべてが法令基準に適合している必要があり、準備を怠ると許可が下りないリスクもあります。
まずは用途地域の確認から始め、計画的にステップを進めていくことで、民泊ビジネスを安全かつ効果的に始めることができます。