「民泊を通年で安定運営したいけれど、「民泊新法と旅館業法の違い」や「転換手続きの流れ」が分からず悩んでいませんか?」民泊新法では年間180日の制限があり、通年営業には旅館業法への切り替えが必要です。
- 民泊ビジネスをこれから始めようとしている初心者の方
- 民泊を年間通して安定的に運営したい事業者
- 民泊新法の180日制限を超えて営業を検討している方
民泊新法と旅館業法の違いを理解する
1.民泊新法の特徴と年間営業日数の制限
2018年に施行された「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)」は、個人が自宅などを宿泊施設として貸し出すことを可能にした法律です。主な目的は、訪日外国人の増加に伴う宿泊需要の受け皿を広げることにあります。
しかし、民泊新法の最大の特徴は「年間180日まで」という営業日数制限です。この制限により、年間を通じて安定した運営を行いたい事業者にとっては、収益化の壁となる場合が多いのが実情です。
また、営業を行うためには都道府県知事等への届出が必要であり、保健所や消防署の基準も満たさなければなりませんが、旅館業法ほど厳密な構造・設備基準は課されていません。
2.旅館業法の種類と許可要件
「旅館業法」は、宿泊業を恒常的に営むことを前提とした法律です。
許可を受ける形態には、「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」などがあり、それぞれで客室数・面積・共用スペースなどの基準が異なります。
例えば、簡易宿所営業はゲストハウスやホステルなど少人数向け施設を想定しており、比較的柔軟な設計が可能です。
対して、旅館・ホテル営業は規模が大きく、客室の構造・面積・衛生管理・防火設備などが詳細に定められている点が特徴です。
つまり、旅館業法による営業は民泊よりも許可取得のハードルは高いものの、取得後は通年営業が可能となり、集客の幅が大きく広がります。
3.どんなケースで旅館業法への転換が必要になるのか
民泊新法での営業を続けていると、季節や時期によって稼働率にムラが生じやすく、180日制限を超えるニーズに対応できない場合があります。
特に、年間を通じて宿泊客を受け入れたい、またはOTA(Booking.com、楽天トラベルなど)での販売強化を目指す事業者は、旅館業法への転換を検討すべき段階です。
さらに、地域によっては民泊新法の届出が制限されているエリアもあるため、「法的に安定して長期運営できる仕組み」に切り替えることが、今後の宿泊ビジネスの成長には不可欠です。
転換を検討する前に確認すべきポイント
1.建物の用途地域・構造・面積などの法的制限
旅館業法による営業を行う場合、まず確認すべきは建物の「用途地域」です。
用途地域によっては宿泊施設が認められない場合があり、特に第一種低層住居専用地域などでは許可が下りません。
旅館業可能な用途地域
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域
また、建物の構造も重要です。木造や軽量鉄骨造の場合、防火・避難基準を満たす改修が求められるケースもあります。
現状の建物が旅館業法上の要件を満たせるかを事前に確認することが、無駄なコストや手戻りを防ぐ第一歩です。
2.消防・衛生設備などの基準適合性の確認
旅館業法の許可を得るには、消防法令に基づく設備設置が必須です。誘導灯や消火器、火災報知器などの設置基準が民泊新法よりも厳格に定められています。
また、浴室やトイレの数、換気・照明・給排水などの衛生面の基準もあり、保健所による事前確認が必要です。
こうした基準を満たしていない場合は、改修計画を立てて整備しなければなりません。
消防・衛生の両面での適合性確認が、転換手続きの成否を分ける最重要ポイントといえます。
3.自治体条例・近隣環境への配慮と説明責任
民泊から旅館業法への転換を行う際には、地域の条例や自治体独自の基準も確認が必要です。
特に都市部では、「用途地域が同じでも条例で営業が制限される」ケースがあります。
また、建物が住宅街に位置する場合には、近隣住民への説明も不可欠です。
騒音・ゴミ出し・出入りの頻度といった生活環境への影響を丁寧に説明し、合意を得ておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
旅館業法への転換手続きの流れ
1.行政への事前相談と申請準備
旅館業法への転換をスムーズに進めるには、まず保健所や消防署など関係行政機関への事前相談が欠かせません。
ここで、建物の構造・用途・設備が法的に問題ないかを確認し、必要な改修内容を明確にします。
相談時には、図面や写真を提示しながら現状を説明するとスムーズです。
事前に行政と方針をすり合わせておくことで、申請後の修正指摘や再提出を防ぎ、手続き期間を短縮できます。
2.図面・衛生管理計画・消防計画など必要書類の作成
旅館業法の許可申請には、多数の添付書類が必要です。
代表的なものとしては、平面図・立面図・設備図、衛生管理計画書、消防設備計画書、運営規程などが挙げられます。
これらの書類は、保健所・消防署・建築指導課など複数の部門で確認されるため、整合性が取れていないと差し戻される可能性があります。
3.現地調査・修正対応・許可取得までのプロセス
書類提出後、行政による現地調査(立入検査)が行われます。設備や清掃状態、避難経路、消火器の配置などが実際に基準を満たしているかを確認する工程です。
この際、軽微な不備があれば是正指導が入り、再確認後に正式な許可が下ります。許可証が交付されると、晴れて旅館業法に基づく営業が可能になります。
現地調査は「形式的な審査」ではなく、実際の安全・衛生基準を守るための最終チェックであり、最も重要なステップです。
許可取得後の運営と注意点
1.宿泊者名簿・清掃記録などの管理義務
旅館業法の許可を取得した後は、日々の運営にも法的義務があります。まず宿泊者名簿の作成・保管が必須で、氏名・住所・宿泊日数などを正確に記録する必要があります。
さらに、客室や共用部分の清掃・消毒状況を記録することで、衛生管理基準を継続的に満たすことができます。
宿泊者名簿や清掃記録は、行政の立入検査時に最も重視される項目であり、運営上の基盤となる部分です。
2.定期的な衛生検査・消防点検の実施
許可後も、衛生検査や消防設備点検を定期的に行うことが義務付けられています。
例えば、消火器や火災報知器の点検、避難経路の障害物チェックなどは、万が一の災害時に施設を安全に保つために欠かせません。
これらの点検は自己点検だけでなく、行政による立入検査でも確認されます。定期的な点検と記録の管理は、安全な運営と法令遵守の両立に直結します。
3.旅館業法に基づく表示・広告ルールの遵守
宿泊施設の名称や広告表記にもルールがあります。許可を受けた営業形態を正しく表示し、虚偽や誤解を招く表現は避けなければなりません。
また、OTAや自社サイトで宿泊情報を公開する場合も、旅館業法の許可内容に沿った記載が求められます。表示・広告の正確性は信頼性とコンプライアンスの象徴であり、集客にも直結します。
民泊から旅館業法へ転換するメリットと課題
1.年間営業可能・OTA掲載強化による収益拡大
民泊新法では制限されていた年間営業日数がなくなるため、通年で宿泊客を受け入れられる点が最大のメリットです。これにより、繁忙期や閑散期に関係なく安定した収益を得ることができます。
また、旅館業法の許可を得ることでOTA(オンライン旅行予約サイト)への掲載も容易になり、国内外の集客力が大幅に向上します。
2.改修コスト・人員体制など運営コストの増加
旅館業法に適合するための改修や設備整備にはコストがかかります。消火設備や避難経路の確保、衛生管理のための設備投資などは、事前に計画を立てる必要があります。
さらに、清掃や衛生管理を維持するための人員体制も整える必要があり、運営コストが増加する点は課題となります。収益拡大のメリットとコスト増のバランスを見極めることが重要です。
3.法令遵守による信頼性向上とブランド化の効果
旅館業法の許可を取得して運営することは、宿泊施設としての信頼性を高める大きな要素です。安全・衛生管理が適切に行われていることを示すことで、ゲストからの安心感を得やすくなります。
これにより、施設のブランド化やリピーター獲得にもつながり、中長期的な事業成長が期待できます。
まとめ
民泊新法から旅館業法への転換は、単なる許可変更ではなく、営業の安定化・収益拡大・信頼性向上を実現する戦略的なステップです。事前の建物確認、消防・衛生基準の適合、必要書類の整備、行政との調整がすべて成功の鍵となります。
運営開始後も、宿泊者名簿や清掃記録の管理、定期点検、表示・広告の適正化などを徹底することで、通年営業のメリットを最大化できます。民泊から旅館業法への転換は、長期的な宿泊ビジネスの安定と成長に直結する重要なプロセスです。
