「大阪市の旅館業条例改正が可決されたけれど、自分の物件はどうなるの?」「施行日までに何をしておけばいいの?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
大阪市の旅館業条例の改正案(議案第124号)は、令和8年9月30日の市会本会議で原案どおり可決・成立しました。施行日は令和8年10月30日です。
改正条例には、施行日前に一定の手続きを済ませた施設には改正前の基準を適用する「経過措置」が設けられています。施行までの残り期間にどう動くかで、物件の扱いが大きく変わる可能性があります。
本記事では、可決・成立で確定した内容と、施行日前に確認すべき実務上のポイントを整理して解説します。
- 大阪市で旅館業の許可取得を計画している方
- 木造・鉄骨造の物件や住居が併存する建物で開業を考えている方
- すでに大阪市内で旅館業を営んでいる方
大阪市旅館業条例は可決・成立した
1.議案第124号の可決と施行日
改正条例は令和8年9月15日に市会へ上程され、9月18日の民生保健委員会での審査を経て、9月30日の本会議で原案どおり可決・成立しました。
施行日は令和8年10月30日です。施行日以後に行う許可申請などには、原則として改正後の基準が適用されます。
2.改正3本柱のおさらい
改正の柱は3つです。1つ目は、住居が存在する建物(マンションや長屋など)で旅館業を営む場合に、建物を鉄筋コンクリート造(RC)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)とする構造基準の新設です。
2つ目は、宿泊者が施設を使用している間、営業者や従業者が常駐することを求める義務の新設です。3つ目は、近隣住民への周知の対象となる面積の基準を33㎡から200㎡に広げ、周知事項に騒音防止策と緊急時の対応を加える見直しです。
3.案の段階から何が確定したか
パブリックコメントの段階では概要しか示されていませんでしたが、上程によって条文が確定しました。特に実務で重要なのが、条例の附則に定められた経過措置です。
どの施設に改正前の基準が適用され、どの施設に改正後の基準が適用されるのかが、条文上で明確になりました。次の章から、この点を詳しく見ていきます。
改正条例は9月30日に可決・成立し、10月30日に施行されます。構造基準・常駐義務・近隣周知の3本柱に加え、附則の経過措置が条文で確定しました。
最大の分かれ道「10月29日までの建築計画届」
1.経過措置(附則)の仕組み
附則では、施行日前に建築計画届出書を提出した施設について、その施設を使った新規の許可申請も改正前の基準で審査するとされています。
つまり、10月29日までに建築計画届を出せば、施行日以後の許可申請でも旧基準で審査されることになります。新しい構造基準(RC・SRC要件)に当てはまる物件にとっては、まさに分かれ道です。
2.届出だけで足りる
この経過措置は、建築計画届出書を提出していれば適用されます。消防法令適合通知書の交付までは求められていません。
とはいえ、届出書には施設の計画内容を記載する必要があり、図面などの準備も欠かせません。残り期間を考えると、すぐに準備に着手する必要があります。
3.対象になりやすい物件
特に影響が大きいのは、住居が併存する建物で、構造が木造や鉄骨造の物件です。改正後の基準では、原則としてRC・SRC造でなければ許可を受けられなくなるためです。
こうした物件で旅館業を計画している方は、施行日を過ぎると旧基準で審査を受ける道がなくなる可能性があります。計画中の物件がある場合は、早急に検討してください。
施行日前(10月29日まで)に建築計画届出書を提出すれば、その後の新規許可申請も旧基準で審査されます。消防法令適合通知書の交付までは不要です。
旧基準が適用されるケース・されないケース
1.施行日前に許可申請した施設
施行日前にすでに許可申請を済ませている施設は、改正前の基準で審査されます。建築計画届と同じく、施行日までに手続きを進めておくことがポイントです。
申請の準備がほぼ整っている場合は、施行日前の申請を目指すことも選択肢になります。
2.承継・居抜きで始める場合
すでに許可を受けている施設を使って、新たに旅館業を始める場合も、改正前の基準によるとされています。いわゆる承継や居抜きのケースです。
既存の許可施設を引き継ぐ形での開業は、改正後も一定の選択肢として残ることになります。ただし、個別の事情によって手続きは異なるため、事前の確認が必要です。
3.延べ面積が増える改修は新基準になる
注意が必要なのは、旧基準が適用される施設であっても、施行日以後に延べ面積の増加を伴う改修を行うと、新しい構造基準が適用される点です。
将来的に増築や拡張を予定している場合は、その計画が構造基準にどう影響するかを、あらかじめ確認しておく必要があります。
施行日前の許可申請や、既存の許可施設を使う承継・居抜きは旧基準が適用されます。ただし、施行日以後に延べ面積が増える改修をすると、新しい構造基準の対象になります。
常駐義務は既存施設にも即適用
1.経過措置がない理由
附則の経過措置の対象とされているのは、構造基準と近隣周知の規定のみです。常駐義務は経過措置の対象に含まれていません。
そのため、常駐義務は10月30日から、既存の施設を含むすべての施設に適用されます。すでに許可を受けて営業している方も、施行日までに対応を検討しておく必要があります。
2.「旅館業の施設に常駐」の読み方と管理事務室
条文では「当該宿泊施設に係る旅館業の施設に常駐」と書かれており、宿泊施設そのものと「旅館業の施設」が書き分けられています。
大阪市の現行制度では、玄関帳場を設けない施設の代替として、一定の範囲内に設ける管理事務室が構造設備に組み込まれています。委員会でも、市は施設内または一定距離内の管理事務室での常駐を想定した説明をしており、常駐の場所は宿泊室のある建物に限られないと読む見方があります。
3.未確定の運用
一方で、管理事務室を複数の施設で共同利用できるか、外部の駆けつけサービスや巡回サービスを利用できるかといった具体的な運用は、まだ明らかになっていません。
今後、ガイドライン等で示される見込みです。運用の詳細が分かるまでは、報道の印象だけで撤退や廃業を判断せず、条文と今後の公表内容をもとに冷静に検討することが大切です。
常駐義務には経過措置がなく、10月30日から既存施設を含むすべての施設に適用されます。管理事務室の扱いなど運用の詳細は、今後の公表内容を確認する必要があります。
規則・審査基準・指導要綱の改正案もチェック
1.防音性能を認めてもらう2つのルート
構造基準には、RC・SRC造と同等以上の防音性能があると市長が認める場合の例外があります。9月18日に公表された指導要綱の改正案では、その認定方法として2つのルートが示されました。
1つは、試験検査機関による遮音測定・音響測定の結果などで、RC・SRC造と同等以上の性能を証明する方法です。もう1つは、建築基準法上の「ホテル又は旅館」の用途に適合していることを、検査済証などで証明する方法です。木造・鉄骨造でも、防音性能を証明できれば例外の対象になり得ます。
2.添付書類に加わる3区分
改正案では、許可申請や建築計画届の添付書類に、新たに3つの区分が加わります。居住部分がないことを確認できる書類、RC・SRC造であることを確認できる書類、防音性能を確認できる書類です。
物件の状況に応じて、どの書類を用意する必要があるのかを早めに確認し、取得に時間がかかる書類から準備を始めることをおすすめします。
3.意見募集と結果公表の予定
施行規則、審査基準、指導要綱の改正案3本については、10月17日まで意見募集が行われています。意見は誰でも提出でき、結果は施行前日の10月29日に公表される予定です。
最終的な内容は意見募集の結果を踏まえて確定するため、公表後の内容もあわせて確認するようにしてください。
防音性能の認定には2つのルートが示され、添付書類にも3つの区分が加わる予定です。改正案は10月17日まで意見募集中で、10月29日に結果が公表される見込みです。
まとめ
大阪市の旅館業条例改正は、令和8年9月30日に可決・成立し、10月30日に施行されます。住居が併存する建物のRC・SRC構造基準、常駐義務、近隣周知の拡大という3つの柱は、大阪市で旅館業を営む方にとって大きな影響があります。
特に重要なのは、10月29日までに建築計画届出書を提出すれば、その後の新規許可申請も改正前の基準で審査されるという経過措置です。木造・鉄骨造で住居が併存する物件を計画している方にとっては、この期限が大きな分かれ道になります。
また、常駐義務には経過措置がなく、既存施設にも施行日から適用されます。規則・審査基準・指導要綱の改正内容もあわせて確認しながら、施行前の今のうちに、ご自身の物件がどの扱いになるのかを整理しておきましょう。
