「民泊が運営できない地域があるの?」 「民泊と用途地域ってどんな関係があるの?」 「民泊開業のため物件を決めたが、民泊禁止地域だった…」
この記事では、民泊専門行政書士が民泊と用途地域の関係について詳しく解説します。
- 民泊を始めたい方
- 民泊物件を決めた後に後悔したくない方
- 副収入を作りたい方
用途地域とは
『用途地域』とは、都市計画法で定められている「土地の使い方のルール」のことです。
種類が異なるこれらの土地利用が混ざっていると、個人の生活や企業の事業における利便性が悪くなり、景観的にも統一感がなくなります。そこで都市を以下の13種類に区分し、種類ごとに使い道を制限しているのです。
用途の制限に加えて、建築物の建て方のルールも決まっています。
これらの用途地域ごとに建築物の用途や建て方が制限されています。
1.住居系
2.商業系
3.工業系
用途地域の指定がない「都市計画区域外」や「用途地域無指定の地域」では、用途制限を受けずに民泊運営が可能です。
民泊の種類ごとの用途地域
民泊はどの法律に基づいて営業するかで、運営できる用途地域が変わります。
ここでは3つの民泊種類について、それぞれの用途地域を説明します。
1.旅館業法に基づく民泊
旅館業法の民泊(簡易宿所営業)は、以下の用途地域で営業が可能です。
第一種住居地域(3000㎡以下)
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
旅館業法は、宿泊施設の営業を規制する法律で、主に3つの営業形態があります。
そのうち民泊は「簡易宿所営業」に該当し、客室を多人数で共用する形式の宿泊施設です。簡易宿所は、13種類ある用途地域のうち「住居専用地域」では営業できず、営業可能な地域は「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」の6つに限られます。用途地域ごとのルールに従い、適切な場所で営業を行う必要があります。
2.住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊
住宅宿泊事業法の民泊は、「住宅」で行うことが必要であり、住宅が建てられる用途地域であれば営業可能です。対象となる用途地域は次のとおりです。
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、
第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域
田園住居地域
近隣商業地域、商業地域
準工業地域、工業地域
住宅宿泊事業法(民泊新法)は、住宅を利用した民泊を規制する法律で、年間180日までの宿泊提供を認めています。この法律に基づく民泊は、住宅が建てられる用途地域であれば幅広く営業が可能で、12種類の用途地域で営業できます。
旅館業法の民泊が認められていない住居専用地域でも営業できる点が特徴です。ただし、住宅を使用することが条件で、利用する物件は一軒家や共同住宅(マンション・アパート)などが該当します。
3.特区民泊
特区民泊は、国家戦略特別区域法に基づき、特定の地域で旅館業法の規制を緩和して民泊を認める制度です。通常の民泊と異なり、365日営業が可能で、年間を通じて安定した売上が期待できます。特区民泊は、通常の「住居専用地域」でも営業できるため、柔軟な運営が可能です。
2024年9月時点で特区民泊が可能なエリアは、東京都大田区、千葉市、新潟市、北九州市、大阪府、大阪市、八尾市、寝屋川市です。
ただし、自治体ごとに異なる規定があるため、営業条件やルールの確認が必要です。
用途地域の例外
用途地域だけでは営業可能かどうか判断できない場合もあります。以下の2点に注意が必要です。
特別用途地区
特別用途地区は13種類の用途地域に重ねて指定されるもので、用途地域の制限を強化または緩和します。特別用途地区に指定されている場合、通常は営業可能な地域でも民泊が認められないことがあります。
条例
各自治体が独自に定める条例により、用途地域のルールがさらに厳格化される場合があります。
例えば、東京都品川区では月曜日の正午から土曜日の正午まで「近隣商業地域」と「商業地域」を除く全域で営業が制限されています。
用途地域の調査方法
民泊を運営する前に、用途地域の確認は必須です。以下の方法で用途地域を調べましょう。
1.用途地域マップ
用途地域マップは、全国の市区町村ごとの用途地域を色分け表示で確認できるオンラインツールです。
使い方は簡単で、まず県を選び、その後に自治体名を選択するだけです。マップは視覚的に用途地域の区分を把握するのに便利ですが、情報が古い場合もあるため、必ず情報の更新日をチェックしましょう。
2.自治体が公開する都市計画図
自治体の都市計画図は「○○市 都市計画情報」でネット検索して確認できます。
都市計画図には、用途地域や開発制限などの詳細な情報が記載されており、民泊運営を検討する際の重要な資料です。公式サイトで提供されている都市計画情報を参照することで、正確で最新の用途地域を確認しましょう。
3.自治体窓口への問い合わせ
用途地域の最新情報を得るためには、自治体窓口への問い合わせが確実です。
電話や訪問で直接確認することで、ネット上では得られない最新の用途地域や条例に関する詳細な情報が得られます。自治体の連絡先や担当部署を公式サイトで確認し、正確な情報収集を心がけましょう。
まとめ
民泊運営を成功させるには、用途地域の確認だけでなく、その地域の条例まで調査することが不可欠です。どの法律に基づいて民泊を行うかによって、営業可能な地域が異なるため、最初にその点を明確にする必要があります。また、特別用途地区や各自治体の条例など、用途地域の例外も考慮し、事前に十分な調査を行うことが重要です。しかし、地域ごとの規定は複雑で、個別のケースによって異なる場合もあります。