「民泊を始めたいが自己資金が足りない」「民泊ローンや融資の種類が知りたい」という方のために、ローンを活用した民泊経営の方法を詳しく解説します。
初心者でも始めやすいのが民泊の魅力ではありますが、それでもある程度のまとまった開業資金が必要です。
自己資金だけでは足りない場合は、ローンや融資を活用し、民泊事業に早期に取組み、事業拡大を目指しましょう。
- 民泊をしたいが、自己資金が少ない方
- 民泊開業費用のどこまでが融資を利用できるか知りたい方
- 民泊開業でローンを組む時の注意点を知りたい
ローンの種類
民泊を始める際に利用できるローンは、主に以下の3種類に分けられます。それぞれの特徴を理解し、適切なローンを選ぶことが重要です。
1.住宅ローン
2.事業用ローン
3.民泊事業者向けローン
それぞれ特徴やサービス内容が異なるため、ご自身にとってどの選択肢が最適か、イメージしながらご覧ください。
1.住宅ローン
住宅を購入し、「自己居住型の民泊を始める」場合に利用できるのが住宅ローンです。
このローンのメリットは、他のローンと比べて金利が低く、住宅ローン控除による節税効果も期待できる点です。民泊運営を始める前に、自己居住部分の床面積が「建物の50%以上」であることが条件となります。
ただし、すでに住宅ローンを組んでいる物件で新たに民泊を開始する場合は、金融機関の契約内容を確認しましょう。
許可を得ずに民泊を始めると契約違反となるリスクがあるため、事前に金融機関に相談し、必要な手続きを行うことが必要です。
2.事業用ローン
事業用ローンは、家主不在型の民泊や旅館業法に基づく営業に適したローンです。
設備資金や人件費など幅広い用途に対応可能で、不動産投資ローンやアパートローンを活用することもできます。家主不在のアパートやマンションの一室で民泊を行う場合には、不動産を担保にしたローンを利用することで審査が通りやすくなります。
事業用ローンは、簡易宿所型の民泊や特区民泊を始める方におすすめです。
一方、民泊新法による運営の場合、対応不可なケースもあるため、その際は民泊事業者向けローンの利用を検討しましょう。
3.民泊事業者向けローン
民泊専用のローンは、近年、需要の増加に伴い充実してきています。
これらのローンは、民泊ビジネスを始める際や運営を支援するための特別な融資制度であり、民泊事業者にとって資金調達の重要な手段となっています。以下では、代表的な2つの民泊事業者向けローンについて詳しく紹介します。
三井住友トラスト・ローン&ファイナンス「民泊事業ローン」
三井住友トラスト・ローン&ファイナンスが提供する「民泊事業ローン」は、民泊専用に設計されたローンです。
簡単に融資対象費用、借入期間、金利などの条件についてご説明します。
不動産の取得:新しい物件を購入する際に利用できます。
リフォーム費用:物件の内装を民泊仕様にリフォームする費用を賄うことができます。
家具・家電の購入:宿泊客の快適な滞在のための設備を整えるための購入費用も対象です。
借入期間
最長で35年の長期借入れが可能です。長期間での返済計画が立てられるため、月々の返済額を抑えやすいのが魅力です。
金利
金利は2.9%から3.9%の変動型です。市場の金利動向によって変動するため、ローン契約時に将来的な金利上昇のリスクを考慮する必要があります。
連帯保証人
原則として、連帯保証人は不要です。ただし、金融機関が特別に保証を要求する場合もあるため、事前に確認が必要です。
このローンは、民泊ビジネスに特化しているため、不動産購入や改装、必要な設備の購入に柔軟に対応できるのがメリットです。長期的な資金計画を立てることで、安定した経営を目指せます。
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫(JFC)は、政府系金融機関として中小企業や個人事業主を支援しており、民泊事業向けの融資制度も整備しています。
一般貸付制度
幅広い事業者を対象とする融資制度で、民泊の運営にも活用可能です。事業規模や資金用途に応じた柔軟な借入ができます。
新規開業資金制度
これから民泊を始める方や、開業後7年以内の方が対象となります。
旅館業法での許可を受けた民泊運営を行う方に適しています。簡易宿所型の民泊など、法的な営業許可を持つことで融資審査が通りやすくなります。
特別利率
女性や若年層(35歳未満)、シニア(60歳以上)の事業者に対しては特別利率が適用される場合があります。これにより、通常よりも低金利で借入れが可能になります。
公庫の融資は、事業経験が少ない方や新規開業者にも門戸が開かれており、政府支援による安心感があります。民泊ビジネスの経験が少ない方にとって特に魅力的な選択肢となるでしょう。
民泊開業時に利用できるローン・融資の費用と用途
民泊を開業する際、資金調達は重要なステップです。
借り入れた資金は、以下の主な用途に利用できます。ここでは、各費用の詳細と、それぞれの費用に適したローンの種類についても解説します。
1.物件の購入・貸借費用
民泊用の物件を確保するためには、購入または賃借が必要です。初期投資を抑えたい場合は賃借をおすすめします。賃借にかかる初期費用の目安は、賃料の6ヶ月分です。
初月家賃
敷金・礼金
保証金
仲介手数料
初回家賃保証料
その他契約時の費用
一方で物件を購入する場合は、将来的な資産価値を考慮した選択が求められます。購入によって所有権を持つことで、安定した運営が可能になります。
特に地方の一軒家や空き家は数百万円で購入できることもあり、立地や施設の規模に基づいた資金計画が重要です。
2.リフォーム費用
内装リフォームは、利用客の快適な環境を提供するために重要です。
施工範囲によって費用は変動しますが、以下のような目安があります。
簡単な工事(クロスや床の補修):約10万円
水回りの改修(浴室やキッチン):50〜数百万円
日本の文化を感じたい利用者が多いため、古民家を利用する場合は、DIYによる改装で費用を抑えることも可能です。
3.家具・家電等の購入費用
家具や家電は、利用客の満足度に直結します。必要に応じて、以下のアイテムを揃えましょう。
テレビ
寝具
冷蔵庫
Wi-Fi設備
ソファ、サイドテーブル、電気ケトル、ドライヤーなど
新品にこだわらず、リサイクルショップやフリマアプリを活用することでコストを抑えることができます。良品を選びつつ、状態が悪いものは避けましょう。
費用を最低限に抑えてしまうと満足度が得られず、リピーターを獲得できないかもしれません。
4.消防設備の設置・交換費用
民泊運営には、消防設備の設置が義務付けられています。必要な設備は以下の通りです。
自動火災報知設備:10,000〜15,000円
誘導灯(工事費含む):50,000円
特にカーテンや絨毯は防炎性能が求められます。設置費用は施設の規模によります。
5.行政への届出費用
民泊開業には自治体への各種届出が必要です。
必要な書類には、建物の平面図や立面図があります。業者に依頼した場合、作成費用は約30,000円が目安です。
自分で準備することでコストを削減可能ですが、すべてを代行業者や行政書士に依頼すると20〜40万円の費用がかかります。
民泊開業時にローンを利用する際の注意点
民泊を開業するためにローンを利用する場合、慎重な計画と準備が欠かせません。ここでは、成功するための3つの重要なポイントを解説します。
1.綿密な収支計画書を作る
「収支計画書」は、収入と支出を詳細に予測するために必要不可欠な書類です。
この計画書は、ローンを組む際の審査結果に大きく影響を及ぼします。そのため、宿泊料金や稼働率を調整しながらシミュレーションを繰り返すことが重要です。
繁忙期と閑散期を考慮する: 例えば、夏休みなどの繁忙期には宿泊料金を通常より高めに設定するなど、シーズンごとの変動を反映させましょう。
さまざまなシナリオを想定する: 最悪のシナリオや最良のシナリオも考慮することで、事業リスクを浮き彫りにし、事前に対策を立てることが可能になります。
2.余裕を持った返済計画を立てる
作成した収支計画書を元に、無理のない返済計画を立てることが大切です。民泊事業は、繁忙期と閑散期の収益差が大きいことが特徴です。そのため、繁忙期の収益をしっかり管理し、閑散期の資金繰りに備える必要があります。
資金の積立を考える
返済準備資金を積み立てることで、万が一の際にも対応しやすくなります。
他の収入源を確保する
例えば、別のビジネスや投資収入を持つことで、資金繰りの安定性を高めることができます。
3.ローンが残っているセカンドハウスは利用不可
ローンが残っているセカンドハウスを民泊に利用することはできません。これは、金融機関からの融資審査において重要なポイントです。
不備が見つかると、融資を断られたり、途中で打ち切られたりする可能性があります。そのため、万全の準備を整えて、ローン申請に臨むことが重要です。
まとめ
民泊開業には、物件の調達や内装リフォームなど、まとまった資金が必要です。資金調達の選択肢としては、住宅ローンから公的融資まで様々あるため、ご自身の運営方針に適した方法を選びましょう。
民泊事業を始める際、収支計画の作成から許可取得までの手続きは複雑です。専門知識を持つ専門家に依頼することで、スムーズな開業が可能になります。
専門家のサポートを受けることで、安心して民泊事業をスタートさせることができるでしょう。